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マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)

マイコプラズマ感染症とは

マイコプラズマ感染症とはマイコプラズマ感染症は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌が原因で発症する感染症です。
主に小学生以上のお子様に多く見られ、3歳未満の乳幼児では比較的少なく、1歳未満での発症はまれです。
学級内での流行も見られることがあり、咳やくしゃみなどによる飛沫感染を主な感染経路として広がります。潜伏期間が2~3週間と長いため、感染してから発症するまでに時間を要するのが特徴です。
感染してもすべての人が発症するわけではなく、約10人に1人が発症すると言われています。
また、自然治癒することも多い病気です。

マイコプラズマ感染症の症状

マイコプラズマ感染症の症状マイコプラズマ感染症は、発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛などの症状が現れ、数日後に乾いた咳が出現します。
この咳は解熱後も長く続くことが特徴的です。
ただし、これらの症状だけでは診断は難しく、まれに中耳炎、皮疹、心筋炎、ギランバレー症候群など、肺炎以外の合併症を引き起こすこともあります。

マイコプラズマ感染症の原因

感染経路

マイコプラズマ感染症は、飛沫感染と接触感染によって広がります。咳やくしゃみによる飛沫を吸い込むことで感染するほか、感染者が触れたものを介して感染することもあります。
ただし、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスほどの強い感染力はなく、濃厚接触が必要とされます。
そのため、学校や家庭など、密な環境での感染が多くみられます。
特にお子様たちは濃厚接触の機会が多いため、感染しやすい状況にあります。

潜伏期間

マイコプラズマ感染症の潜伏期間は2~3週間と長く、感染に気付かないまま周囲に広げてしまう可能性があります。
有効なワクチンはないため、予防には手洗い、マスク着用、消毒などの基本的な感染対策が重要です。
特に流行期には、咳エチケットなど、コロナ禍で実践した対策を徹底することで感染リスクを低減できます。

感染期間

マイコプラズマ感染症の感染期間は約2~3週間です。
感染力は発症時に最も強くなりますが、潜伏期間中も感染する可能性があります。
症状が治まった後も、4~6週間程度は保菌者として感染源となる可能性があるため、発症前後約1か月間は周囲への感染に注意が必要です。特に家族間での感染率が高いため、注意が求められます。
感染しても必ず肺炎を発症するわけではなく、約90%の人は風邪症状で自然治癒しますが、5~10%は肺炎に進行します。

マイコプラズマ感染症の
検査・診断方法

当院では、問診で症状を詳しく伺い、必要に応じて検査を行います。

画像検査

マイコプラズマ肺炎では、胸部X線検査で「すりガラス陰影」が見られることがあります。
ただし、他の疾患でも同様の陰影が見られるため、他の検査と併せて総合的に診断します。

血液検査

血液検査では、マイコプラズマに対する抗体価の測定、炎症反応の指標となるCRPや白血球数の測定を行います。
これにより、マイコプラズマ感染の有無や炎症の程度を評価します。
抗体価の測定は精度が高いですが、検査結果が出るまでに数日間要することがデメリットです。

多項目同時PCR検査

当院ではマイコプラズマ感染症が疑われる場合、多項目同時PCR検査を実施しています。
お子様の鼻から綿棒を差し入れて、のどの奥の粘液(鼻咽頭ぬぐい液)を採取し、PCR法にてマイコプラズマを検出します。
検査開始から15分程度で結果が判明し、陽性/陰性一致率はともに高く、極めて高精度です。

マイコプラズマ感染症の治療法

マイコプラズマ感染症は自然治癒するケースも多いため、必ずしも抗菌薬が必要ではありません。
発熱が2~3日以上続く場合や、湿性咳嗽が1週間以上続く場合に検査や抗菌薬投与を検討します。
マイコプラズマ感染症には、一般的な抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系)が効きにくいの特徴です。主に使用する抗菌薬はマクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)で、マクロライドが効きにくい場合はテトラサイクリン系、ドキシサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬を使用します。
抗菌薬によって使用できる年齢や治療期間は異なりますので、当院ではお子様に合った適切な抗菌薬を処方します。

早く治す方法はある?

マイコプラズマ感染症を劇的に早く治す治療法はありませんが、適切な抗菌薬を服用することで自然治癒よりも症状の改善を早めることができます。
抗菌薬を開始してから2~3日で熱が下がり始めることが多いですが、咳だけは数週間続くこともあります。
現時点では、有効なワクチンは開発されていません。
感染が疑われる場合には、速やかに当院を受診し、適切な診断と治療を受けることが早期回復への近道です。処方された薬は、指示通りに最後まで服用することが大切です。

咳が止まらない時の対処法

マイコプラズマ感染症に特徴的な“乾いた咳”は、解熱後も長く続くことが多く、睡眠の妨げになるなど日常生活に支障をきたします。
以下のような自宅でできるケアを取り入れることで、咳の軽減が期待できます。

こまめに水分補給をする

マイコプラズマ感染症による乾いた咳には、のどの潤いを保つことが効果的です。
のどの潤いを保つため、常温の水やノンカフェインの飲料(麦茶など)をこまめに摂取しましょう。
特に就寝前や夜間の水分補給はおすすめです。
糖分の多いスポーツドリンクは1日1~2杯までを目安とし、利尿作用のあるカフェインを含む飲料(コーヒーや濃い緑茶など)は控えめにするとよいでしょう。

部屋の湿度を50~60%に
保つ

乾燥した空気は咳を悪化させるため、加湿器などを用いて湿度を50~60%に保つことが重要です。
湿度が低すぎるとのどの乾燥を招き、高すぎるとカビやダニの繁殖につながります。
加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋に干したり、お湯を張った洗面器を置くなどして湿度を調整し

マスクをする

マスク着用は、のどの保湿と乾燥・冷気からの保護に効果的です。
特に夜間や就寝時にマスクを着用することで、咳の悪化を防ぐことができます。
肌が弱いお子様には、ガーゼマスクや保湿タイプのマスクもおすすめです。

飲み物などでのどを温める

温かい飲み物や蒸しタオルはのどの血行を促進し、炎症や乾燥を和らげ、咳を鎮める効果があります。
生姜湯やハーブティー、はちみつ湯など、身体を温める飲み物を少しずつゆっくりと飲むとよいでしょう。また、清潔な蒸しタオルを首元に当てるのも効果的です。

肺を圧迫しない姿勢をとる

咳が出やすい時は横になると肺が圧迫され、呼吸がしにくくなることがあります。
上半身を起こし、クッションや枕で背中を支え、首や肩の力を抜いて呼吸しやすい姿勢を保つと、肺への負担が軽減され、咳の軽減につながります。リラックスした姿勢で十分な休息を取りましょう。

マイコプラズマ感染症を
予防するには

マイコプラズマ感染症を予防するにはマイコプラズマ感染症は飛沫感染や接触感染により広がるため、次のような日常的な予防対策が有効です。まずは、お子様の手洗いの徹底です。流水と石けんでしっかり手洗いすることが大切です。
咳エチケットとして、咳やくしゃみが出るときはマスクを着用し、マスクがない場合は腕や袖で口と鼻を覆いましょう。
家庭内でも個人のタオルを使用し、共用は避けるようにしましょう。

よくあるご質問

咳はどんな音で、どんな特徴がありますか?

マイコプラズマ感染症では、発熱後に乾いた「コンコン」という咳が特徴的です。解熱後も咳だけが長く続くことが多く、特に夜間に強くなる傾向があります
咳が3週間以上続くこともあり、学業や睡眠など日常生活に支障をきたすこともあります。

何日で治りますか?

多くの方は軽症で、適切な治療により1週間程度で改善しています。
ただし、気管支炎や肺炎を併発することもあり、その場合は3~4週間ほど咳が続くことがあります。また、高熱が長引くお子様もいらっしゃいます。
個人差が大きいため、無理せずに、医師の指示に従って治療を続けましょう。

マイコプラズマ肺炎になって放っておくとどうなりますか?

治療をせずに放置すると、熱や咳が長引き、肺炎が進行する恐れがあります。
特に喘息をお持ちのお子様は、感染が引き金となって喘息発作が誘発されることがあります。
呼吸が苦しそう、咳が止まらない、発熱が長引くといった症状があれば、早めに当院を受診してください。

合併症の恐れはありますか?

マイコプラズマ肺炎は間質性肺炎に分類されますが、気管支炎や細菌性肺炎を合併することがあります。
まれに心膜炎、心筋炎などの心臓の炎症や、中耳炎、副鼻腔炎などの合併症が見られることもあります。

学校(幼稚園・保育園)はいつから行っていいですか?

マイコプラズマ感染症の場合、登園・登校開始の明確な基準はありませんが、熱が下がり、咳がおさまって、食欲と元気が出てくれば再開できます。
ただし、周囲への感染予防のためにも、体調が安定してから無理のない範囲で復帰しましょう。
また肺への負担を考慮し、登校後1週間程度は、体育や激しい運動を控えるようお勧めします。

マイコプラズマ感染症は大人にもうつるのですか?

マイコプラズマ感染症は、全年齢層で発症しますが、特に学童、青年期のお子様に多く見られます。
ただし、重症化することは比較的少なく、症状も軽度で済む場合が多いです。
家庭内や学校など、濃厚接触の機会が多い環境では感染が広がりやすいため、家庭内でも咳エチケットや手洗いを徹底しましょう。