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学校検尿で異常を指摘された

学校検尿で異常を指摘されたら

学校検尿で異常を指摘されるお子様は少なくありません。
これは症状の有無にかかわらず、尿や腎臓のわずかな異変を検出する目的で実施されているためです。
小学校から中学校の9年間で、延べ20%以上のお子様が検尿で異常を指摘されると言われています。
蛋白尿や血尿が見つかっても、心配のないケースも多いため、慌てずにまずはご相談ください。

ただし、もちろん病気が関係していることもあるため、「大丈夫だろう」と自己判断せず、医療機関で精密検査を受けるようにしましょう。
当院では、慢性腎疾患に対する診療経験が豊富な院長が、丁寧に診察を行います。

学校検尿で何が分かる?

学校検尿で何が分かる?学校検尿は、1973年以降、学校保健法に基づいて全国で実施されています。
その目的は、「慢性糸球体腎炎や慢性腎臓病の早期発見」です。
この検査の導入により、かつて小児末期腎不全の原因疾患の約半数を占めていた慢性糸球体腎炎が、末期腎不全に進行する頻度は激減しています。
また、糖尿病の早期発見にも貢献しています。
慢性腎臓病は、病状が進行するまで自覚症状が現れにくく、発見時にはすでに腎機能の回復が難しい場合が少なくありません。そのため、学校検尿で異常を指摘された場合は、自覚症状の有無にかかわらず、医療機関で再検査や精密検査を受けて、早期診断・早期介入することが重要です。

学校検尿の評価項目と
検尿異常に対する追加検査

学校検尿では、試験紙法(尿定性検査)を用いて、尿潜血、尿蛋白、尿糖の有無を確認します。
特に、「尿蛋白3+以上」、「尿糖3+以上」の場合は、緊急性の高い病態の可能性があります。
当院では、検尿異常が見られた場合、試験紙法に加えて尿定量検査や尿沈渣を行い、試験紙法で同定された尿潜血や尿蛋白が、偽陽性または偽陰性でないかを評価します。
さらに、必要に応じて超音波検査を行い、腎臓や尿路の異常の有無を確認します。

学校検尿の再検査で指摘される項目と想定される病気

血尿単独

血尿単独の場合、遺伝的背景のない無症候性血尿や良性家族性血尿が多く、ほとんどは心配のないケースです。しかし、まれに慢性糸球体腎炎の初期症状であることもあります。
血尿単独の場合は予後良好とされていますが、蛋白尿が出現しないか、定期的に尿検査を行い、経過観察を続ける必要があります。
また、腎尿路結石や、まれに腎尿路の腫瘍が血尿の原因となることもあるため、超音波検査による評価が推奨されます。
当院では、無症候性血尿の定期的な経過観察が可能です。経過観察中に蛋白尿を伴う場合など、専門的な治療が必要と判断される際は、適切な医療機関(兵庫県立こども病院など)へご紹介いたします。

蛋白尿単独

蛋白尿単独の場合、多くは起立性(蛋白尿や体位性)蛋白尿や濃縮尿などの生理的な蛋白尿であり、特別な管理は不要です。
しかし、まれにネフローゼ症候群や腎尿路の異常、Dent病(尿細管の異常)など治療が必要な病気が発見されることがあります。

ネフローゼ症候群について詳しく

起立性(体位性)蛋白尿

学校検診で蛋白尿単独が指摘された場合、最も多い原因は起立性蛋白尿です。
起立性蛋白尿であれば、活動中に生成された尿には蛋白が検出されますが、安静臥位(睡眠中)に生成された尿では検出されません。
起立性蛋白尿は腎機能に影響を与えないため、管理が不要ですが、病的な蛋白尿と区別するために正しい採尿方法が重要です。
学校検尿や再検査では、起立性蛋白尿を避けるため、必ず就寝直前に排尿し、翌朝起床直後の尿(早朝第一尿)を採取してください。
起立性蛋白尿はやせ型、高身長のお子様で生じやすいです。

濃縮された尿

睡眠中の尿は、就寝前に大量の水分を摂取しない限り、濃縮されます。
濃縮尿では尿中の蛋白濃度が上昇し、尿検査で蛋白陽性(偽陽性)となる場合があります。
当院では、尿定量検査を組み合わせることで、濃縮尿と病的蛋白尿の鑑別が可能です。

血尿と蛋白尿合併

血尿と蛋白尿がいずれも続く場合は、慢性糸球体腎炎の可能性が高まります。
特に学童期において最も発症頻度の高い腎炎はIgA腎症です。
IgA腎症は、風邪や発熱時にコーラ色の尿(肉眼的血尿)が見られることがあります。
かつては予後良好と考えられていましたが、重症例では腎不全に進行することもあるため、適切なタイミングでの診断と治療介入が必要です。
診断には腎生検が必要となるため、当院では専門の医療機関へご紹介いたします。

白血球尿

白血球尿は、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎、また女の子では外陰炎などが原因で起こることがあります。
ただし、これらの疾患は通常、検尿を行う前に他の症状によって気づかれることがほとんどです。
例えば、尿道炎では排尿時痛、膀胱炎では頻尿や残尿感、排尿時痛、腎盂腎炎では発熱、悪寒、背部痛などの症状がみられます。

糖尿

尿糖が検出される原因として、近年増加している小児の生活習慣病、いわゆる「ペットボトル症候群」による糖尿病が挙げられます。
学校検尿は、糖尿病の早期発見に役立っています。
まれに、治療を必要としない腎性糖尿が見つかることもあります。
腎臓の尿細管と呼ばれる部位は、一度尿中に排出されたブドウ糖を血管内に再吸収する働きがあります。しかし、尿細管の機能に異常が生じると、ブドウ糖が血管内に再吸収されずに、そのまま尿中に排出されてしまいます。
そのため、尿糖陽性でありながら糖尿病が否定された場合には、尿細管機能の異常を考慮し、精密な検査を行います。

学校検尿の異常に対して当院を受診する際にお願いしたいこと

学校検尿の異常に対して当院を受診する際にお願いしたいこと正確に検尿を評価するためには、起立性蛋白尿が生じないように尿を採取していただく必要があります。
受診前日は、必ず就寝直前に排尿し、当日は起床直後の尿(早朝第一尿)を採取してください。
最初の受診時からこの方法で尿を採取していただくことで、受診回数の削減にもつながります。
早朝第一尿を採取する容器は、事前に当院へ取りに来ていただくか、あるいは紙コップに尿を半分ほど採取し、ラップなどでこぼれないようにして当院へお持ちください。