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小児特発性ネフローゼ症候群

小児ネフローゼ症候群とは

小児ネフローゼ症候群とはネフローゼ症候群とは、腎臓の糸球体と呼ばれる尿を作る部分から、大量のタンパク質が尿の中に漏れ出ることで、血液中のタンパク質が減少し、主に全身のむくみが現れる病気です。
特に2〜6歳の幼児に多く発症します。
ネフローゼ症候群の原因はさまざまですが、小児では原因が特定できない「特発性ネフローゼ症候群」が最も一般的です。
この病気は適切な治療を行うことで多くのお子様が寛解しますが、再発を繰り返すこともあるため、長期的な管理が必要です。

小児ネフローゼ症候群の
分類

小児ネフローゼ症候群は、原因別に以下の3タイプに分類されます。

  1. 特発性ネフローゼ症候群
    明確な原因が不明なネフローゼ症候群で、微小変化型や巣状分節性糸球体硬化症などが挙げられます。
  2. 続発性(二次性)ネフローゼ症候群
    全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、IgA血管炎(紫斑病性腎炎)、糖尿病(糖尿病性腎症)などの全身疾患どが原因となって発症するものが挙げられます。
  3. 先天性ネフローゼ症候群
    生後3か月以内に発症するもので、遺伝子異常が関与する場合が多いです。

小児では特発性ネフローゼ症候群が約90%を占めます。
また、小児特発性ネフローゼ症候群は、治療への反応や経過によって以下のように分類されます。

  1. ステロイド感受性ネフローゼ症候群
    ステロイド治療で寛解するもの。
  2. 頻回再発型ネフローゼ症候群
    ステロイド感受性ネフローゼ症候群のうち、繰り返し再発するもの。
    特に、ステロイドを減量または中止すると再発するものは「ステロイド依存性ネフローゼ症候群」と呼ばれます。
  3. ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群
    ステロイド治療を行っても寛解しないもの。

小児特発性ネフローゼ症候群の症状

小児特発性ネフローゼ症候群の症状小児特発性ネフローゼ症候群の初期症状は、「なんとなく元気がない」「まぶたが腫れぼったい」など、わかりにくい場合が多いです。
むくみが進行すると、顔だけでなく下肢や陰嚢(男児)も腫れ、靴がきつくなることがあります。
また、尿が泡立ちやすくなったり、尿量が減少して色の濃い尿が出ることもあります。
さらに、体内に水が貯まることで、体重が急激に増加することもあります。
お子様にこのような症状がみられた場合は、お気軽に当院へご相談ください。

合併症

特発性ネフローゼ症候群では、むくみに加えて、さまざまな症状が現れることがあります。

呼吸や腹部の症状

血管から周囲の組織に水が漏れることで、胸に水が貯まり(胸水貯留)、息苦しくなることがあります。
また、腸のむくみにより腸の動きが悪くなると、腹痛や吐き気、下痢、食欲不振などの症状を伴うこともあります。

感染症

ネフローゼ症候群では、タンパク質の一種である抗体が尿中へ漏れることにより免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
また、治療に用いるステロイドの影響で感染リスクがさらに高まり、重症化する可能性もあります。
特に、腹水に感染を起こす細菌性腹膜炎は、高熱や腹痛を伴い、重症化することがあるため、注意が必要です。

検査方法

検査方法診断には、血液検査と尿検査が必要です(高度蛋白尿と低蛋白(アルブミン)血症の確認)。
診断確定後、病状把握と合併症の検索のために、レントゲンや超音波検査を行います。
各種検査によって微小変化型以外の病型が疑われる場合は、腎生検(腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する検査)を行います。
小児ネフローゼ症候群が疑われる場合は、専門の医療機関へご紹介いたします。

小児特発性ネフローゼ症候群の治療と経過

小児特発性ネフローゼ症候群の治療の基本は、ステロイド(プレドニゾロン)です。
発症時はステロイドを1日3回毎日、4週間服用します(腹痛が強い場合は点滴治療)。
多くのお子様(約80~90%)がステロイドに反応し、10-14日間で蛋白尿が消失し、寛解に至ります。
ステロイドで寛解した場合、治療開始から4週間後にステロイドを減量し、1日1回1日おきの服用を4週間続けた後に終了します。
寛解することはステロイドへの反応を示す良い兆候ですが、治癒を意味するものではありません。
寛解しても約70%のお子様が再発するため、定期的な通院と再発時の早期治療が重要です。
自宅で尿検査を行い、早期発見に努めましょう。

よくあるご質問

再発しますか?

小児特発性ネフローゼ症候群の80~90%のお子様、ステロイドで寛解します。
4週間以内に寛解に至った場合は、「ステロイド感受性ネフローゼ症候群」と診断します。
ステロイド感受性ネフローゼ症候群の約30%は、初回治療のみで再発しません。
治療終了後2年間再発がなければ、その後再発する可能性は低いと考えられています。
しかし、約70%のお子様が再発し、50~60%は頻回に再発を繰り返す「頻回再発型ネフローゼ症候群」に至ります。特に、ステロイドの減量中または中止するとすぐに再発してしまう場合は、「ステロイド依存性ネフローゼ症候群」と診断されます。
頻回再発型やステロイド依存性の場合、再発を抑制するためにシクロスポリン(ネオーラル)などの免疫抑制剤を使用することがあります。

小児特発性ネフローゼ症候群は治る病気ですか?

特発性ネフローゼ症候群は再発を繰り返すため、長期管理が必要な病気ですが、適切な治療と管理によりコントロールすることが可能です。
青年期以降は再発しにくくなることが多く、根気強く病気と付き合っていくという姿勢が大切です。
当院では、小児特発性ネフローゼ症候群に対し豊富な診療経験を持つ院長が診察しますので、ご不明な・ご不安な点がございましたらお気軽にご相談ください。

入院期間はどれくらいですか?

特発性ネフローゼ症候群の病状と治療を行う医療機関によって異なります。
「ステロイド感受性ネフローゼ症候群」の場合、入院期間は3-4週間程度が一般的です。
しかし、「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群」の場合は、病状が安定するまで入院する必要があるため、入院期間は長ければ半年や1年以上に及ぶこともあります。